最近、免疫チェックポイント阻害薬というタイプの薬剤が続々と登場し、進行腎癌患者さんの治療は大きく変化し、生存率の改善が見られています。多くの薬剤の登場により、治療の選択肢が増えることは良いことですが、多くの選択肢の中から、どのように最良の治療を選択するかは難しい問題です。血液検査などで治療効果を予測する指標が見つかれば、治療選択の道標となります。
我々は、埼玉医科大学国際医療センター、自治医科大学附属さいたま医療センター、虎の門病院、獨協医科大学埼玉医療センター、埼玉県立がんセンターと連携し(武蔵野研究グループ)、進行腎癌に対する免疫チェックポイント阻害薬併用療法についての新しい知見を報告してきました(J Clin Med. 2021;10:4767., Int J Clin Oncol. 2023;28:1651-1658., Int J Clin Oncol. 2023;30:714-721.)。
今回、この武蔵野研究データベースを用いて、埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科が中心となって血液の炎症性マーカーの数値解析を行い、好中球リンパ球比 (NLR)とC反応性タンパク(CRP)が、免疫チェックポイント阻害薬併用療法を行った進行性腎癌の予後を予測する因子であることを見出しました。また、治療経過中の炎症性マーカーの推移を見ることで、治療による恩恵が少ない患者さんの早期発見にも役立てられることを、International Journal of Clinical Oncology誌に報告いたしました。
本研究の結果が、今後の進行腎癌患者さんのより良い治療に貢献できると考えております。
論文名:
Nakayama, T., Takeshita, H., Kagawa, M. et al. Prognostic significance of inflammatory markers in patients with advanced renal cell carcinoma receiving nivolumab plus ipilimumab. Int J Clin Oncol 29, 1528–1537 (2024). https://doi.org/10.1007/s10147-024-02593-1

埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科 (文責:中山貴之、竹下英毅)