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抗がん剤薬:トラスツズマブ デルクステカン(T-DTX)

2023年10月1日更新

ヒトの細胞の表面には”HER2タンパク”が存在し、細胞増殖の調節に関係しております。そして、一部の乳がんでは細胞の表面にHER2タンパクが過剰発現した乳がんが存在します(図1)。この”HER2タンパク”を標的とした薬の一つがトラスツズマブです。HER2タンパクが過剰発現している乳がんはトラスツズマブが投与されると①HER2タンパクとトラスツズマブが結合することで免疫反応が引き起こされてがん細胞を攻撃します。

また、②HER2タンパクにトラスツズマブが作用することで細胞増殖を抑制します。さらにトラスツズマブにデルクステカンといった抗がん剤が組み合わさったお薬であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DTX)ではHER2タンパクが発現しているがん細胞内にデルクステカンが取り込まれて、③狙い撃ちでがん細胞を攻撃します(T-DTXは①②③の作用でがん細胞を攻撃します)(図2)。
また、T-TDXはHER2タンパクの発現が低い乳がんに対しても抗腫瘍効果をきたすことがあります。そのために従来トリプルネガティブ(ホルモン受容体陰性及びHER2陰性(HER2低発現))といわれていたがんに対しても効果を認めることがあります。一方で、重篤な有害事象に注意が必要で特に肺炎(薬剤関連間質性肺疾患)を発症することがあります。そのために、投与が可能な施設として、24時間緊急対応が可能で呼吸器疾患の診断に精通した医師の存在等の施設要件満たした施設でのみ投与することができる薬剤です。当院は指定要件を満たしております。

図1HER2タンパクの発現(陰性・陽性) 当院症例より
HER2タンパクの発現(陰性・陽性)
図2:トラスツズマブ デルクステカン作用機序
トラスツズマブ デルクステカン作用機序

埼玉医科大学総合医療センター ブレストケア科(乳腺科)

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