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1.背景
当科では、身体疾患の患者さんの心理的問題のケアや予防(コンサルテーション・リエゾン精神医学といいます)を中心に、臨床・研究を行っています。
心不全の患者さんは3-4割に不眠を認めることが明らかになっていますが、本邦では欧米よりも不眠の患者さんの受診率が低いと言われています。その詳細な診療実態は明らかになっていないことから、心不全の患者さんは不眠を医療者へ相談できているか、どのようなケアを受け、それは役立っているのかなどを明らかにするため、アンケート調査を行いました。2.研究成果
不眠を有する心不全患者さん296名のうち、医療者に不眠を相談した人は6割弱で、その中の約半数の人が、相談は役立ったと答えました。
相談内容として「睡眠に関する助言」「薬の処方」は役立った、役立たなかった理由のいずれにも多く、「睡眠に関する助言」の内容は医療者の職種により差がありました。また、医療者に相談しなかった人は、「不眠を重要視・問題視していない」「どこに相談すべきかわからない」などと答えていました。
これらの結果から、心不全の患者さんは不眠を医療者へ相談しても必ずしも役立つと感じておらず、相談先もわからないという問題が明らかになりました。
今回の調査結果より、患者さんに心不全と不眠の関係性を理解してもらうことや、医療者も専門性に応じた支援の工夫が必要であることが考えられます。3.論文・学会発表
志賀浪貴文、中村菜々子、小林清香、五十嵐友里、倉持泉、吉益晴夫:心不全患者の不眠に対する対処方法の実態調査:総合病院精神医学(0915-5872)34巻1号 Page44-51(2022.01)
当研究報告は、令和5年度日本総合病院精神医学会「金子賞」を受賞しました。埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック