今回ご紹介する2つの研究は、文部科学省の科学研究費補助金を受けて行われています。
まず、手術室や集中治療部門では、心臓手術時に起こりやすい腎機能障害を早く発見するための研究を行いました(論文1)。具体的には、血液内の酸素濃度を測る装置を使って、尿中の酸素濃度を調べました。その結果、この方法で測定される尿中の酸素濃度が、現在使われているクレアチニンという指標よりも心臓手術後の腎機能障害を早く診断できる可能性があることがわかりました。世界的にも、腎機能障害の早期診断や効果的な治療方法はまだ確立されておらず、私たちの研究結果は有望な診断法の一つとなる可能性があります。これにより、将来的には腎機能障害を早く発見し、適切な治療につなげる手段となることが期待されます。
また、産科麻酔部門では、帝王切開手術後の痛みを管理し早い回復を促すための研究を行っています(論文2)。私たちの研究チームは、「Obstetric Quality of Recovery」という指標を日本語に翻訳し、その有用性や適切さを確認しました。また、帝王切開に関連する睡眠の問題や痛みが、産後うつの発症に関わる可能性についても調査しています。
将来的には、この指標や睡眠の質を活用して、帝王切開後の回復をどのように促進できるかについて、実際の医療現場での研究を進め、患者さんの回復や健康に役立つケア方法やアプローチを開発することを目指しています。
論文名1: Intermittent Urine Oxygen Tension Monitoring for Predicting Acute Kidney Injury After Cardiovascular Surgery: A Preliminary Prospective Observational Study. Kato T, Kawasaki Y, Koyama K. Cureus. 2021 Jul 3;13(7): e16135.
論文名2: Postpartum recovery of nulliparous women following scheduled cesarean delivery and spontaneous vaginal delivery: a prospective observational study. Mazda Y, Ando K, Kato A, Noguchi S, Sugiyama T, Hizuka K, Nagai A, Ikeda Y, Sakamaki D, Guo N, Carvalho B, Sultan P. AJOG Glob Rep. 2023 May 20;3(3):100226.
埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科