近年、乾癬(かんせん)は皮膚だけではなく、脂肪肝やメタボリックシンドロームとも密接に関連していることがわかっています。脂肪肝とは肝臓に脂肪が多くたまった状態のことをいい、乾癬や脂肪肝の患者さんは心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患で亡くなることも多いため、注意しなければなりません。しかし、乾癬患者さんの重症度と脂肪肝に関する研究はほとんどありません。そこで、本研究は、乾癬患者さんにおける非アルコール性脂肪肝との関連を調べることを目的に行いました。
近年登場した乾癬で過剰につくられている炎症を引き起こす物質である「タンパク質」の働きを抑える生物学的製剤は、乾癬によく効くのですが、それらの生物学的製剤が脂肪肝に及ぼす影響についても検討いたしました。その結果、当院の乾癬患者さんの82.6％に脂肪肝を合併していることが明らかとなりました。特に男性の重症乾癬の患者さんで脂肪肝の合併リスクが高いことがわかりました。乾癬の生物学的製剤であるインターロイキン17阻害薬は脂肪肝の線維化スコアを改善しました。
以上のことから、われわれは特に男性の重症な乾癬患者さんにおいて、脂肪肝を早期に発見し、生活習慣の改善なども考慮した積極的な介入が重要であると考えています。そのためには、消化器肝臓内科、内分泌糖尿病内科、循環器内科や栄養部などの他科や他職種との連携を充実させ、患者さんのトータルケアを目指した診療が必要であると考えます。
Effects of interleukin-17 inhibitors on hepatic fibrosis index in patients with psoriasis and metabolic dysfunction-associated fatty liver disease: Directed acyclic graphs. Takamura S, Teraki Y, Katayama E, Kawaguchi T, Kawaguchi M, Nakano D, Tsutsumi T, Nagoshi S, Nakama T, Torimura T. Clin Mol Hepatol. 2022 Apr; 28 (2):269-272.
埼玉医科大学総合医療センター 皮膚科
